疲労について

疲労のメカニズム

疲労を感じるのは脳であるということ
疲労といっても、歩き過ぎて足が疲れた、というのと、今日は仕事が立て込んでいて疲れた、というのでは疲労の種類が違います。
しかし、人間が疲労を感じているのはいずれも脳であって、疲労を感じるメカニズムは脳にあると考えられます。
実際、疲労を感じる作業をする前と後では、脳の一部の血流量が増加することが分かっており、慢性疲労症候群の患者さんの場合は、疲労に関する部分の機能が低下していることや、神経伝達物質の分泌に異常がある場合があることが分かっています。

 

活性酸素の発生

また、疲労時には大量の活性酸素が発生することが分かっています。
活性酸素は、老化を促す成分としても知られていますが、簡単に言うと体をさび付かせてしまうということ。
発生した活性酸素は、細胞そのものをさび付かせてしまうため、エネルギーの生産と消費という人間の活動を阻害してしまい、エネルギー不足で疲労が蓄積してしまうのです。
この状態を放置していると、さらに疲労が蓄積してしまい、慢性疲労の状態に陥ってしまいます。
そうなると、いつも疲労感があって、日常生活にも支障をきたしてしまうことになりかねません。
こうした疲れは身体的なものだけでなく、精神的な疲れであることも多く、憂鬱な気分が続いてしまったり、集中力がなくなったりという症状が現れることもあるのです。

 

自律神経と活性酸素

運動をすると疲れるのには、自立神経の働きが関係しています。
対になっている副交感神経が安静時に活発になるのに対して、交感神経は活動しているときに活発になる神経です。
運動をしたときに、体温や心拍を調整するのは、交感神経の役割。
こうして活発に交感神経が働くと、神経細胞内には大量に活性酸素が発生して細胞を損傷し、老廃物が増えて疲労因子が作られます。
この疲労因子の発生が大脳に伝わることで疲労を感じるのです。

 

疲労がたまると悪循環も

元気な時には、人の体は活発にエネルギー生産を行い、疲労を生み出す成分である活性酸素の発生を抑えることによってよりスムーズに栄養が体に行きわたり、それが再び活発なエネルギー生産につながっています。
一方、疲れて活性酸素が増えてくると、エネルギー生産が十分に行われないだけでなく、それが上手く全身に行きわたらなかったり、栄養分がスムーズに循環しなくなることで、さらにエネルギー生産が滞るといった悪循環に陥ります。
その結果、疲労が蓄積して慢性的に疲れた状態になってしまうのです。

 

疲労の原因

体の疲れと心の疲れ
運動をすると体は疲労を感じます。
また、気を遣ったり嫌なことがあると心も疲労を感じます。
こうした疲労がなぜ起こるのかというと、いずれもその部分のパフォーマンスが落ちていますよ、ということを脳に伝えるために疲労を感じるのだといわれています。
たとえば、全力で運動をすると筋肉は損傷しますが、その後の休息によってそれは回復します。
しかし、疲労を感じずにそのまま運動を続けてしまうとどうなるでしょう。
筋肉の損傷が進行して、休息では回復できないほどになってしまう可能性があります。
それを防ぐために、体は疲労を脳に訴えて、筋肉を休めるように伝えるのです。
痛みを感じることで重大な怪我から自然に身を護るのと同じように、疲労を感じることで人間は体を守っているのだといえるでしょう。
精神的な疲労も同様で、疲労感は精神や身体から警告するためのアラームだと考えられています。
体を守るためには大切な機能であり、仕事や運動における高揚感によってこのアラームがうまく機能しないと過労となって最悪の場合は過労死を引き起こすこともあるので注意が必要といえるでしょう。

 

乳酸がたまるから疲れるのではない

よく運動をすると筋肉に乳酸がたまって疲労を感じる、と言いますが、実際には乳酸によって疲労を感じるわけではありません。
たとえば疲労していない筋肉に乳酸を投与しても疲労を引き起こすわけではないのです。
それでは乳酸が増えるのはなぜかというと、乳酸は疲労した筋肉を回復させるため。
つまり乳酸は、疲労原因物質ではなく、むしろ疲労回復物質ということになります。
疲労原因物質としては、むしろ活性酸素のほうが影響が大きく、筋肉で増えた活性酸素は筋肉組織の損傷を促しますし、脳で発生した活性酸素は自律神経の機能低下を促します。
疲労を抑えるという点では、乳酸ではなく活性酸素に働きかけることが大切になるのです。

 

疲労の症状

主な疲労症状

疲労の症状の主なものとしては、肩こりや目の疲れ、食欲低下、肌荒れ、集中力の低下、思考力の低下、やる気がでない、などがあげられます。
もちろん疲れたからといってこれらすべての症状が現れるわけではありませんし、人によっても出る症状は異なります。
また、疲労の原因によっても現れる症状は違うので、一概には言えません。
疲れてくると早く走れなくなってくるのと同じで、仕事や勉強をしていても作業効率が落ちてきたらそれは疲労の症状だと考えられます。
注意力が散漫になり、作業によっては危険を生じることもあるので、その場合は休息を取ったほうがよいでしょう。

 

身体的な疲労と精神的な疲労

運動をしたり、体を動かすことによって感じるのが身体的な疲労であるのに対して、気を使ったり嫌なことがあったりして感じるのが精神的な疲労になります。
原因は全く違うこれらの疲労ですが、意外と症状には共通するものが多く、身体的な疲労が精神的な疲労を引き起こしたり、その逆が起こることも少なくありません。
たとえば、やる気が出なくなったり集中力がなくなったり食欲がなくなるというのは、精神的な疲労によるものと思われがちですが、これらは身体的な疲労によっても起こりますし、元の原因が精神的なものであっても、こうした症状がおこることで身体的な疲労につながることもあります。
そもそも疲労を感じるのはどちらの場合も脳であって、精神的な疲労と身体的な疲労は切っても切れない関係にあるといって良いでしょう。

 

一時的な疲労と慢性疲労

一時的な疲労とは、何かの行動や出来事の後に一時的に感じる疲労であり、概ね休息によって回復することが可能です。
一方の慢性疲労の場合は、常に疲労を感じている状態で、睡眠や休息をとっても回復が難しい場合が多いです。
睡眠を取ったはずなのに朝起きたときから疲労感が消えなかったり、常に倦怠感がある、というのは慢性疲労だといえるでしょう。

 

身体症状を伴う疲労

疲労によって、何らかの身体症状が現れることもあります。
最も多いのが頭痛で、これは身体的な疲労でも精神的な疲労でも起こる症状です。
また、疲労が蓄積することで頭痛が悪化する場合もあります。
また、胃腸の不調も疲労によって現れやすい症状です。
ストレスで胃が痛くなったり、お腹を壊したり、といった経験がある人は少なくないのではないでしょうか。
これらは、疲労が身体症状を引き起こしているというよりは、体の不調を疲労という形で脳に訴えているということもあります。
体や精神を休めることで改善する場合もありますから、まずはゆっくり休んで、それでも良くならないようであれば何らかの病気の可能性もあるので医師に相談することも必要です。
身体症状が現れても「疲れているだけだから」と勝手に判断するのは危険ですので、注意するようにしてください。